ペルソナマーケティング、効果的なサービスを提供するには | ミッシェル・グリーン

ペルソナマーケティング、効果的なサービスを提供するには

カテゴリー:マーケティング
2015年9月18日

ペルソナと言われてもなんのことかピンと来ない方も多いかもしれません、ゲームなどがお好きな方の中にはそういうワードを聞いたことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。ペルソナとはもともとは古典劇において役者が用いた「仮面」のことで、そこから心理学者ユングに使われ、外的人格、仮面をかぶった人格という概念を「ペルソナ」と呼ぶようになりました。

では「ペルソナマーケティング」のペルソナとは何かというと、製品やサービスにおける理想の顧客となる架空の人物のことです。このペルソナに対して、どうすれば満足してもらえるのかを考えて、商品やサービスを企画していくのが「ペルソナマーケティング」です。

数字によって構成された顧客という存在ではなく、文字によって記された人物に対してマーケティングを行うことで、より効果的な商品やサービスの企画を行います。

 

生活の多様性に対応する

これまでマスコミに広く使われてきた顧客層を分類するマーケティング手法の「F1・M1」のような、年代・性別で分類するものでした。20代から30代前半の女性であれば、ブランドや自分に投資することへの欲求が強く、トレンドにも敏感という設定がされていました。しかし、2000年代に入り、生活や情報メディアの多様化し、年齢と性別だけでは顧客の傾向を判断できないということがわかってきました。

そこで使われるようになったのが「ペルソナマーケティング」です。商品を考え、次に商品に合ったペルソナを作り、そのペルソナの趣味趣向に合わせて商品を修正する。こうして市場を分析するように変わりつつあります。

 

ペルソナの作り方

まずインタビューやデータを見て、どのような方が顧客層にいるのか、中心層を明らかにします。その結果を元に、ペルソナとなる個人を作ります。

ペルソナは、できるかぎり詳細に作られます。ペルソナがどういう人間なのか、ペルソナのプロフィールを読んだ人全員が詳細にイメージできなければいけません。氏名、年齢、性別、居住地、職業、勤務先、年収、家族構成…といった数字やある・なしで書けるものはもちろん、身体的特徴、性格的特徴、人生のゴール、日々のライフスタイル、価値観、趣味趣向、消費者行動、情報収集にはどのメディアを使うかなど、文章によって記述するようなデータも含みます。さらにイメージを明確にするために顔写真を用いることもあります。

本当に実在するかのような人物像を設定することがペルソナマーケティングで重要な部分です。

ペルソナを作る時の注意点なのですが、「生きたモデル」を作りましょう。平均的な人を作るのではありません、生きている個人を作るのです。ペルソナに自分のエピソードを語らせるのも効果的です。

一例として、ちょっと短いですがペルソナを作ってみます。本来ならばインタビューをしたり、定量的なデータを分析して平均的なデータ(セグメントプロファイル)を参考にして、生きているかのような細かいプロフィールを持つモデルを作るのですが、今回は想像で中高年サラリーマンの方が多く来院されている治療院のペルソナという仮定で作成します。

 

日高則夫

42歳、男性、既婚、愛知県名古屋市在住。子供は12歳の小学6年生の男の子と10歳の小学校4年生の女の子。27歳の時に結婚。妻は38歳の女性。職業は製造業を営む企業の、営業課の課長。会社の製品は企業向けのため一般認知度は低いが、規模は大きく全国2位。日本だけでなくアジアの各地にも海外拠点が存在し海外出張もたまにある。年収は800万。経済的には余裕があるが、妻はキャリア志向が強くブライダル企業で今でも働いている。家事や子育ては夫婦で分担して行っているが、内心は妻に仕事を辞めて専業主婦になって欲しいと考えている。

家は住宅街にある一戸建てを購入。家を購入したことには満足しているが、前に住んでいたマンションよりも会社からは離れてしまい朝早く起きるのが少し辛いと感じている。出世欲は高いが、会社の社風として、部長になるには課長としてのキャリアを十分に積まないと認められず、まだしばらくは今のポストを続けるしか無いことをストレスに感じている。

ライフスタイルは家よりも外で飲むことを好む。課長に昇進する前は部署の部下と仕事の後に一緒に飲みに行くことが多かったが、課長昇進後は部下が増えたことで気軽に飲むことは減った。その分一度に飲む量が増えている。テレビも見るがスマホとタブレットを中心に情報収集を行う。特に朝のニュースは出勤のための電車の中スマホで確認する。Amazonからのメールによるおすすめ商品をつい買ってしまう事が多い。

最近身体に急に痛みが走ったり、思うように動かない事が多く衰えを感じ始めている。身体は運動不足で太り気味。お腹が出ていることを気にしているが、周りの人間にも同様の体型をした者が多く、こういうものだと自分を納得させている。健康診断でも注意されることが多い。時間のかかる運動や厳しい食事制限は好まないが、そうでない健康対策ならばお金をかけることも必要だと考えている。

 

本当ならばもっと詳細に、平日の過ごし方、休日の過ごし方などを具体的な一日の流れを書いたり、子供時代の様子などどんな人生を送ってきたかまで踏み込んだ方がいいのですが、今回はただの例ですので、これくらいで筆を置きます。

この日高さんが来院したくなる治療院とは何かを考えることがペルソナマーケティングです。

※注意:念のため注意しておきますが、リサーチをせずに作ったこの日高則夫さんは役に立たないペルソナです。どういう部分を埋めていけばいいのかという部分は参考になるとは思いますが、間違ってもこの日高さんを喜ばせてあげようとは思わないでくださいね。

 

ペルソナマーケティングの事例「3ヶ月で6000万本」アサヒビール

2008年にアサヒビールは定量的なデータの分析や消費者インタビューからペルソナを作りました。

作られたペルソナは、年収900万円、44歳の家族持ち自営業。家族は1歳年下の妻と長男16歳、長女13歳の4人家族で都内在住。このペルソナが欲しがる商品は何かを性格や価値観まで掘り下げて、徹底的に考えたところ、「発泡酒の冷たさにこだわりがある」という結論に至ったそうです。

ペルソナマーケティングの結果をふまえて企画された、アサヒ・クールドラフトは2009年3月発売開始から6月末までに約6000万本も売れる大ヒット商品になりました。

このときにアサヒビールがインタビューした人間は10人。このペルソナを作るために参考にしたのは4人だそうです。インタビューでは、ビールについてが半分、残りの半分はその人の人生について聞いたそうです。アサヒビールは「急成長している市場向けの新商品では従来のマーケティングで良いが、ファンが固定化された市場だからこそペルソナは有効だと思う」と話しています。

 

ペルソナマーケティングのメリット

顧客のライフスタイルが多様化して今、ターゲットユーザーに最も近い理想的個人とはいえ、一人のためにマーケティングを行うことに違和感を感じるかもしれません。なぜペルソナを設定することが重要なのでしょうか?

これは、ターゲットを明確にすることでそのターゲットに特化するためです。商品やサービスを提供する側がよく陥る失敗の一つが、自信のある商品やサービスほど、ターゲットユーザーを適正値より極端に広く設定するというものがあります。

「あんな人に使って欲しい、でも、こんな人にも使って欲しい、こういう使い方もできるようにしたい、もっと機能を増やせばもっとたくさんの人にも利用価値がある…」
 2000年代に入ってから、こういう万能性の高い商品やサービスは求心力を失っています。「なんでもできるは、なにもできない」と同じです。このような手法は、情報も流通も限られていた時代、メディアによって大規模な消費者意識誘導があったからこそ行えたマーケティングだと考えらています。

 

ペルソナマーケティングのデメリット

メリットもあるペルソナマーケティングですが、疑うこと無く実施すべきというほど万能なものではありません。ペルソナマーケティングには3つ無視できないデメリットがあります。

 

① 時間とコストがかかる

ペルソナのデザインがペルソナマーケティングのポイントになります。ここをしっかりと押さえるためには、データを分析し、インタビューを行って、理想的顧客の姿を作り上げなくてはいけません。そのためには時間もコストもかかってしまいます。

 

② イノベーションが起きにくい

イノベーションとは革新的発想のことです。ペルソナを設定することで、効果的にターゲットをしぼりこむ事ができますが、顧客が予想していなかったような感動、期待を大きく上回るような、全く新しい大胆な発想ができなくなる傾向があります。

 

③ ペルソナの設定を間違うことがある

効果的なペルソナを作り上げるには、ペルソナを作る時の仮定や推論が顧客層とある程度は合っている必要があります。そのためにはしっかりとデータを分析し、細かいインタビューが必要になります。

そのためコストも時間もかかるのですが、そうしたリサーチが行えない場合は、イメージが専攻してしまい、正解から大きく外れた人物像をペルソナにしてしまいます。特に30代女性はこういうものだというイメージ(昔ながらのF1層の考え方)がある場合、それに引きずられて、結局昔ながらの年齢・性別による分類に戻ってしまい、ペルソナマーケティングの意味を失いがちです。

 

ペルソナ作りはリサーチを大切に

顧客を数字ではなく、ペルソナという人物の物語で語ることは、サービスを企画する人々が顧客に対する感情移入を深めることにも繋がり、真の意味で顧客が喜ぶサービスを提供できる店舗へと繋がります。この数字を良くしたいではなくあの人を喜ばせたいという考え方の方が、考える方もイメージしやすいものです。それ故にペルソナを作成するためのリサーチが大切かつ大変です。大企業のように2000人もの顧客データを、分析屋が時間とお金とさまざまなツールを使って分析するというような手法は、なかなかできるものではありません。

ですが、治療院の場合は大企業にもない強みがあります。先生のお仕事は実際に顧客となる患者さまと触れ合う仕事という点です。患者さまは時に、身体の症状の話だけではなく、さまざまな話をされると思います。その人がどのような人生を歩んできたのか、どんな考え方をしているのか、もし先生がそうした会話を憶えていて、そしてもし患者さまについてノートなどにメモ書きしていたとしたら、企業が莫大なコストをかけてリサーチするような情報がそこにあると言えます。

患者さまとの交流を元にどのような人物像…「ペルソナ」が先生の治療院にとってターゲット層となるのかを分析することができれば、治療院におけるマーケティングでも効果的なペルソナマーケティングを実施することが十分に可能です。

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