無料を武器に。盛んなフリーミアムと前例の少ないリアルフリーの世界 | ミッシェル・グリーン

無料を武器に。盛んなフリーミアムと前例の少ないリアルフリーの世界

カテゴリー:マーケティング
2015年10月15日

フリーミアムとは、基本的なサービスを無料で提供し、さらに高度な機能を使用する際に料金が課金される仕組みのマーケティング手法です。近年、インターネットサービスの世界で大いに活用されるようになり、かなり多くの企業がこのフリーミアム手法を使っています。PCソフトやソーシャルゲームなどに詳しい先生でしたら、「ああ、あれか」と具体的なメーカー名まで思い当たるかもしれません。

スマートフォン向けアプリ業界では特に顕著で、全世界におけるアプリの売り上げのうち「92%がフリーミアム」だそうです。

 

集客力は力

フリーミアムは、「フリー」と「プレミアム」から作られた造語です(Freemium)。無料体験版にも近いのですが、フリーミアムは無料のままでも構わないという点で古典的な体験版手法とは異なります。

基本サービスを無料で提供する理由は、広く集客することによって有料会員となる潜在顧客を集めることにあります。また、無料プランの利用者からも広告収入によって利益を上げることができます。

インターネットサービスの世界は、在庫コストや複製コストがかからない、もしくは少ないこともあり、無料プランによってたくさんの顧客を集客し、その2%~10%を有料会員にランクアップすることで十分な利益を得るという手法がよく使われています。この手法は節約志向の人も増えた時勢にも合っていると思います。

 

フリーミアムの定義

このマーケティング手法は、2006年にベンチャー投資家のフレッド・ウィルソンによって提唱されたものです。

「サービスを無料で提供し、場合によっては広告収入で支え、口コミ、紹介ネットワーク、有機的な検索マーケティングなどで非常に効率的に多数の顧客を獲得し、そして、顧客基盤に対して付与サービスや強化版サービスを割増価格で提供すること」

もともとこういう概念はあったのですが、明確な一つのビジネスモデルとして定義したのはここからでしょう。

フリーミアムを使い成功しているサービスの共通点として、どれも無料で使えるサービスの利便性が非常に高く、無料の範囲のみで多くのユーザーを囲うことができているということです。そこから、さらに「もう少し便利にしたい」、「このサービスならもっと使ってもいい」というようから、「中毒性」を持つことが成功する条件です。

 

フリーミアムの条件

治療家の世界でも、先生の技術を情報商材として販売しておられる先生でしたら、フリーミアムは実用できる手法です。

では、具体的に成功するフリーミアムの条件とはなんなのでしょうか? 一体人は、どういう時に、無料で使えるプランから、お金を支払うプランの導入を決意するのでしょうか?

実際に成果を上げている5つの成功パターンから考えてみます。

 

1.利用可能な機能が増える

例:スカイプ、食べログ

もっとも一般的な手法で、有料会員になれば使える機能が増えるというものです。
よくある追加機能は、より自分にフィットした情報を得ることができる検索機能の強化でしょう。例えば、追加機能で評価順検索をつけるポータルサイトなどがあります。

 

2.機能制限が解除される

例:チャットワーク、ニコニコ動画、クックパッド

1番目と似ていますが、こちらは増えるのではなく解除されるという手法です。
もし、先生が例に上げたようなサービスをご利用されているのなら、「この機能は有料会員限定です」という表示を見たことがあると思います。言わば、無料プランで集客して、その中で従来の無料体験版要素を用意し手、有料課金へのトリガーにするという方法です。

 

3.使用可能が容量がアップ

例:Dropbox、はてなブログ

利用できる容量を増やしたいというユーザーを有料会員として呼びこむ方法です。クラウドサービスなどでよく用いられます。
長く残るもの、溜まっていくものをベースに課金することで、自然に有料化でき、また溜まったものを移し替えるのは大変なため他のサービスにも乗り換えにくい。マーケターによっては、もっとも有効なフリーミアム手法と考える方もいらっしゃいます。

 

4.有料会員限定コンテンツ

例:クックパッド、@cosme

有料会員のみが閲覧できるコンテンツを特典とするサービスです。無料の記事と有料の記事を置いたりするような方法です。
インターネットの情報は、毎日膨大な量のコンテンツが生成されています。それらは、新聞や雑誌と違って、無料なのが当たり前だとユーザーは考えており、お金を支払わせるのはなかなか難しいというのが現状です。いかにしてクオリティの高いコンテンツを用意できるかが重要です。

 

5.金銭的メリットがある

例:クックパッド、食べログ、Amazon

有料会員になることで割引特典があるサービスです。ネットショップ機能を持っているサービスではサイト内で利用できるクーポンを、食べログは飲食店で使える大幅な割り引きクーポンを配布しています。
フリーミアムは効果的ですが、どこまで無料で開放すべきか、そのバランスを取ることが難しい手法です。無料で十分顧客を囲っておかなければなりませんが、無料で満足されては困ります。
どのような内容であれば、課金してもらえるのか、ユーザー目線から徹底的に分析することが、なによりの成功の鍵となるでしょう。

 

まだまだ未開拓のリアルフリー

ここまでは、主にインターネットの世界のマーケティングとして、フリーミアムを紹介してきました。フリーミアムは在庫コストや複製コストのかからないインターネットビジネスの世界で有効に働く手法です。

しかし、現実の世界でも利用しようと考える企業はあります。

■身近な例としてはマクドナルドで行われた「コーヒー無料サービス」でしょう。飲食店でよく行われる無料サービスと違って、このコーヒー無料サービスには、セットメニュー購入の方に限るでしたり、1000円以上ご利用の方のみという、利用者に対するサービスとは違って、ただ無料で利用できるというサービスです。

もちろん、これは、「コーヒー」というフリーに、「ハンバーガーやポテト」というプレミアムを購入してもらうのが目的です。

 

■日本調剤という医療関係の医療モールでの開業独立支援と処方箋の調剤を生業とする、東証一部上場の大手企業があります。

この企業はリアルフリーミアムで成功した企業の一つです。

医療モールは、一つのビルの中に内科や眼科など複数の施設がテナントとして入居するもので、患者を紹介し合ったり、モール内の医院で協働して利益をあげようという施設です。

しかし、医療モールによってはあまり成果を上げられていないものもあります。医療モールを展開する企業には、開業する際のサポート費用や設備販売で売上を出しているため、開業後のフォロー(アフターサービス)が行き届いていないというのが要因であるようです。

日本調剤は、逆に開業支援を無料にし、開業後に各医院から出される処方箋の調剤を行うことで利益をあげるという手法を考え出しました。この方式であれば、長い付き合いであることが望ましいので、開業後のフォローもしっかり行うことがそのまま利益につながるというわけです。

 

■エステ業界では、脱毛サロンのミュゼプラチナムがリアルフリーミアムを実践しています。創業者は、エステ業界からフリーミアムを実践したのではなく、フリーミアムを実践できるからエステ業界で開業したと聞きます。

ミュゼプラチナムでも完全無料というわけではないようですが、ワキの脱毛100円で無制限というような大胆な「ほとんどフリー」のプランを用意し、顧客を集めています。これだけでは、「こんなに安いのにはなにか良くない理由があるはずだ」と思うものですが、これを一時的なキャンペーンではなく定期的に行うことで、口コミ効果で、安くても品質は十分という情報を拡散していきます。

やがて利用者たちは信頼し、他の部位についてもここで脱毛したい、ひいては徹底的に脱毛したいと、「プレミアム会員」に成長していきます。

それでも、徹底的なコスト管理、インターネットと連動した会員ページなどを組み合わせ、第三者広告の導入など、さまざまな要件をクリアしてリアルフリーミアムを実現しているようです。

 

誰もやっていないところにイノベーション(革新)がある

リアルフリーミアムはまだまだ未開拓の世界です。どうやったら成功するのか、誰もしっかりとした答えを見つけていません。私も、「このようなフリーミアムを実践したいんですけど」と相談されたとしても、「一緒に検討してみましょう」と悩みを分かち合うくらいで、答えをお返しことはできません。

ですが、そうした「成功するか分からない」世界にこそ、イノベーションはあるはずです。最初はふとした閃き。それからしっかりと成功可能かどうか市場や顧客を分析する。最後は勇気を持って挑戦する。
そこに誰も見たことのない、大きな成功があるはずです。


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